WORK
仕事内容
あなたの今のお仕事(現場)を教えてください
2021年2月から、神保町よしもと漫才劇場の「支配人」をしています。
支配人の仕事は、一言で言えば、劇場の全般の統括。具体的には、まだ世に出ていない原石たちを育成し、魅力が最大限伝わるような公演の設定や出演する芸人の出番決めなどです。一方で、劇場を運営するスタッフの手配などハード面も気にしなければなりません。とくに、この神保町よしもと漫才劇場は2020年1月オープンということで、まだ2年目の新しい劇場なので、ソフト面、ハード面ともにしっかりとした“基盤づくり”をしなければならない段階です。まだまだ課題点も多く、「やらなくてはいけないことがこんなにもあるのか」と少々、面食らう部分も正直ありますが、だからこそのやりがいも感じています。
また、コロナ禍の中での劇場運営は、世の中の情勢に合わせて柔軟に対応することが求められます。「コロナだからできない」ではなく、「そんな状況下でも万全な対策をしてどこまでできるのか」と可能性を探ることも仕事です。席が売れないなら他にどんな形なら収益を上げられるのかを考えなければならないと思っています。



仕事において求められる資質
コミュニケーション能力はすごく大事だと思います。芸人とも、スタッフともしゃべらないと伝わらない。劇場業務だけでなく、神保町よしもと漫才劇場を外に向けてアピールすることも仕事のひとつで、積極的にしていかなくてはなりません。
とくに、神保町よしもと漫才劇場になったのは2020年1月。それ以前は神保町花月というお芝居を中心に行う劇場でした。漫才劇場に変わってまだ2年目ということで、社内からはまだ「神保町花月」と呼ばれてしまうこともあります。劇場勤務だと本社とは離れているので、自分から動き、コミュニケーションを取っていかないとならない。そうすることで「最近誰が面白い?」「(番組の)前説に出れる芸人、誰かいる?」など、芸人のチャンスにつながることもあります。
仕事のここが面白い(やりがい)
支配人という仕事では、「自分で決めて、形にできるする」ことの面白さと責任を実感しています。大前提として、いつも考えているのは「若手の芸人が売れるために自分にできることは何か」ということ。そこに正解がないから難しさもありますが、動いたことに芸人さんやお客様が反応してくれたりする部分は、他の職務では味わえない面白さなのではと思っています。
また、所属芸人のいる劇場ならではですが、所属している芸人が賞レースなどで結果を出すとすごく感慨深いものがあります。
仕事をする上で心掛けていることを教えてください
当たり前のことかもしれませんが、「挨拶」はコミュニケーションの基本になることなので、誰よりも気持ちの良い挨拶を心がけています。若手芸人の劇場ということもあって、芸人たちがテレビの現場や取材などに行ったとき、恥ずかしい思いをさせないように、その大事さを伝えたいと思っています。私が率先してお手本となる姿勢をみせなければいけないと意識し、敢えてめっちゃ大きい声でするように意識しています。
EXPERIENCE
社歴・失敗談
吉本興業に入社した動機・きっかけを教えてください
学生のころ、お笑いが好きでした。テレビのネタ番組などで漫才を見るのが好きだったのですが、劇場に観に行ったことはありませんでした。
高校卒業後に一度、他業種に就職しましたが、「仕事をするなら楽しくしたい」と、思い切ってYCC(よしもとクリエイティブカレッジ)に飛び込み、その後、吉本に入社しました。20歳で吉本に入り、10年経って、今、気が付いたら30歳。入った当初は「テレビで見ていた人たち以外にこんなに面白い芸人さんたちがいるのか」と驚きでしたが、今は、劇場支配人としてそんな面白い芸人さんたちの背中を押す立場にいることがもっと驚きです(笑)。

吉本興業に入社して今までどんなお仕事(部署)をしてきましたか?
入社後、大阪でマネジメントを担当。若手芸人を担当した後、月亭一門などの個別マネージャーを務める。その後、大阪の映像制作で5年ほど過ごし、大阪のよしもと漫才劇場を経て、森ノ宮よしもと漫才劇場の立ち上げに携わり、2021年3月から「神保町よしもと漫才劇場」現職に就く。
吉本興業だから味わえた経験を教えてください
吉本興業というところは、“人があったかいな”と感じます。とくに、今は劇場勤務なのですごくチーム感を感じます。フォローしてくれる先輩もたくさんいるので、すごく人間味ある職場で働かせてもらっているなと日々、思います。
あとは、吉本ならではの劇場に携われていることは、この会社ならではかもしれません。いろいろな部署を経験させていただきましたが、私は若手の劇場に携わるというのが性に合っている気がしています。やることもたくさんあるし、大変なこともありますが、若手芸人はやりたいという熱量のある人たちなので。「勝ちたい、負けたくない、売れたい!」という気持ちがすごく強い。そんなエネルギーを間近で感じつつ、サポートができるというこの職場にやりがいを感じます。
飛び上がるほど嬉しかったことは?
当時、マネジメントで若手芸人を担当していたときの方々が今、すごく活躍をされている姿をみると「飛び上がる」とはまた違いますが、すごく感慨深い気持ちになります。
大阪若手班でマンジメントを担当していたとき、アキナ、和牛、アインシュタインの3組のユニット「アキナ牛シュタイン」のライブを経験しました。まだアキナが前身のソーセージの時代だった2011年頃に「ソーセ牛シュタイン」としてスタートしたユニットで当時は200席ぐらいのキャパでライブをしていました。その後、それぞれに賞レースなどで活躍をし、3組が3組ともすごい人気を得て、チケットは入手困難になり、東京公演や韓国公演なども行うまでになっていっていました。昨年、コロナ禍で行われたライブもオンラインも含め大盛況でした。最初の方を知っているだけに3組のご活躍を見るとすごくうれしく感じます。この神保町よしもと漫才劇場でも、人気者が生まれる様にサポートしたいと思っています。
「やってしまった!」失敗から学んだ思い出は?
失敗談はたくさんあって、思い出すとどれも冷や汗が出るものばかりなのですが、そういう失敗を繰り返しながら今があるような感じです。ひとつ例をあげるなら、2~3年目のころ、月亭八光さんの“番組の裏かぶり”で大変ご迷惑をおかけしたことがあります。当時、八光さんはレギュラー番組に出演されていて、別の局で特番にも呼んでいただきました。
私はその特番はレギュラー番組の後に放送するものだと勝手に思い込んでいて、「それなら出演できる」と思っていたのですが、収録日に台本を見て、なんとその番組がレギュラー番組の時間帯で放送する=オンエア時間がかぶってしまうことに気が付いたのです。「これはまずい。ほんまにまずい」と血の気が引いていくのがわかりましたが、すでに八光さんも収録現場にいらしていたので、まずは正直に事情を説明しました。番組のスタッフの方にも謝りつつ、どうするかをご相談したところ、奇跡的にジミー大西さんにピンチヒッターで出演していただけることになり、急遽、ジミーさんに来ていただきました。オンエアの確認という一番、初歩の部分を怠ったことで起きた失敗だったので自分の確認の甘さにしばらく落ち込みましたが、まわりのみなさんに助けていただいたことと、みなさんが「しゃーないやん」と声をかけてくださったことで、なんとか切り替えられた気がします。
吉本興業で達成したいことは?
今の目標は“この神保町よしもと漫才劇場で売れる芸人さんを生み出す”ことです。
若手芸人さんの魅力がきちんと伝わるような企画で面白いものも作りたいと思っています。まだまだ神保町よしもと漫才劇場の知名度が高くないと思うので、劇場自体の認知も、東京の方だけでなく、全国的に上げていきたい。私自身は、テレビで芸人さんを見て育って来たのですが、だからこそ、劇場になじみのない人の気持ちも分かる気がするんです。どんなことをしたら劇場に足を運びたくなるかを考え、多くの方に気軽に来てもらえるような魅力ある劇場にしていきたいと思っています。

MESSAGE
お世話になっているあの方から

9番街レトロさん インタビュー
【Q:小林さんと初めてお会いしたのはいつですか?】
京極:
小林さんが支配人としてこの劇場に来てからです。出会った頃にはもうすでにマスクをしている感じだったので、もうコロナ禍になってからですね。
中村:
まだ30歳の支配人が来るってなって、「え! どんな人くんの?」とちょっと怖かったし、いまだに小林さんのプライベート、想像できないです。休みのときとか何してるんですか?
小林:
確かにプライベートの感じとかは劇場ではださないですね。でも、この間、皇居に散歩に行きましたよ。
中村:
散歩とかするんですね(笑)。まだよくわからない部分も多いです。
京極:
今のところの印象は氷の女。たぶん冷たい部屋に住んでいると思います(笑)。
中村:
大阪の先輩の方々がみんな「めいちゃん」って呼んでいるんです。そのとき、一瞬、支配人じゃない顔が出る気がして。それが唯一、プライベート感が垣間見れる瞬間です。
小林:
若手時代に担当させてもらった方々が、今、無限大ホールとかルミネとかで活躍されていて。その方々は私が入りたての頃も知っているので、そう呼んでくれるんです。ありがたいですよね。
京極:
着任して半年ぐらいですけど、まだ失敗とか見てないです。隙がないです。
小林:
出さんように日々、頑張ってます(笑)。
【Q:支配人として小林さんの仕事ぶりはどうですか?】
京極:
僕のほうが年下なのでこんなこと言うのなんですけど、めちゃくちゃしっかりしてます。
中村:
普通のときはフラットに話してくれるんですけど、遅刻とかしたら、むっちゃちゃんと怒ってくれます。筋が通っているというか。
京極:
なので、あんまり怒らしたくない感じはありますね。
小林:
あかんことはあかんと言わな、外でたときに困るのは自分たちなので。そこはきちんと注意をするようにしています。
京極:
とにかく真面目ですよね。公演も全部見ている。
中村:
そうそう! しかも、劇場の隅で隠れながら!ステージからは見えないから誰もいないかと思うと、笑い声が聞こえてきて「やっぱ今日もおる!」と思うんです。
小林:
バレてる(笑)。
京極:
私服も黒系が多いし、完全に闇に紛れてるんだけど、声だけ聞こえてくる。そんで、「その公演まで観んの?」っていうようなものも観てるのはすごいです。
【Q:小林さんに日頃の感謝の言葉があればお願いします。】
京極:
小林さんが支配人になってから始まった今のシステムによって、いろんな芸人と話せるようになりました。関わる芸人が増えましたし、そこは良かったなと思ってます。
中村:
いろいろ思うことがあったとしても、小林さんは支配人として言いやすい。
京極:
それは確かに。何か問題があったら、一緒になってどうすればいいかを考えてくれそう。
小林:
やっている本人たちでないと分からない部分もあると思うので、それはぜひ言ってきてほしいですね。
中村:
もちろん、なんでもかんでも言えるわけではないけど、でも、言いやすい空気感があるって大事だと思います。若手の劇場では無理だと思っていた、配信のギャラもちゃんと考えてすぐにやってくれた。ほんまにあれはむっちゃありがたかったです。
小林:
改善点のひとつでした。そう言ってもらえて良かったです。
京極:
ほんまに芸人のことを考えてくれる方だと思うので、そこはすごく頼りにしています。
中村:
考え方も芸人よりですもんね。
京極:
照れ屋だからその芸人ぽさが表に出てないだけで、きっかけがあればR-1グランプリにエントリーしているかもしれないです(笑)。